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新・江師風土記(3)江師の地名考

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2017年06月19日

(江師の全景)

(写真の右下がオートキャンプ場・ウェル花夢)

「江師」は、漢字2字で2音節エ・シであり、日本語では理解できない地名である。
 子どもの頃、「大正には市が「エ市」と「コイ市」、隣り合って二つあるよ。」と戯言をいうくらい不思議な地名であった。江師がウェル花夢のあるところで、小石は対岸の小さな集落

 「江」は、入江と川の意がある。特に多いのが「江尻」地名で全国に分布する。江尻は川尻や川口と同じ場合と海岸の場合とがある(民俗地名語彙)。エジリがエシに転訛したとすればここ以外にも事例がありそうだがみあたらないし、江師地区には梼原川の還流丘陵をようする地区ではあるが、特に川を意識する川尻や河口の地形でもない。
 西土佐の江川や四万十市の鵜ノ江など「江」の地形的特徴が理解できるが、江師は川地名とは思えない。

 

(メキシカンハット)

▼アイヌ語
 お遊びで地名アイヌ語小辞典(知里眞志保著)で「江師」をあててみることにする。
 「e-+si-kot(え・シコッ)」と読めば、(頭)+(大きな窪地)となる。つまり、四万十川の河川景観の特徴である穿入曲流の還流丘陵が、ここ江師の地形的特徴であり、集落の中央に位置する字「村中山」に鎮座する河内神社の鎮守の森が丁度「頭」であり、その周囲となる旧河床が「大きな窪地」と見える地形である。この「え・シコッ」が転訛して「エシ」となり江師の漢字をあてたのではなかろうかと推定してみる。古代、梼原川を往来するだれもが、このメキシカンハットのような景観をみて「え・シコッ」といったであろうと納得する景観である。
 ちなみに、この江師の対岸が小石である。小石は周囲を江師に囲まれた四万十町で面積5ha位の一番小さな大字である。地検帳でも枝村として位置付けられており、江師村の庄屋の支配下であったようだ。この小石を昔の人は、「小江師(コ・エシ)」と呼び、それがいつとなく転訛してコイシとなったとみるのはどうだろう。

 

(烏帽子の地名は多い)

▼烏帽子説
 メキシカンハットといったが烏帽子の形から命名された地名は全国にある。多くは烏帽子山、烏帽子岳、烏帽子岩といった山容や岩礁、岬であるが還流丘陵のこの地形は烏帽子ともいえ、エボシからエシに転訛したのではと根拠もなく思ってしまう。

 

▼「エゴ」説 入りこんだ所・凹状地形
 他の言語での安易な解釈は危険との指摘があるのでアイヌ語起源説ではなく「エゴ」説はどうだろう。
 「エゴ」は、高知県安芸郡や山口県柳井市では、日当たりのいい山の窪地。徳島、高知県では川の彎曲して淀んでいる所。高知県幡多郡では岩の穴、岩と岩との間のことをエゴタともいう(民俗地名語彙)。高知県方言辞典にも「川が深くて淀んでいる所(大正)」。エガマなどの柄を差し込む穴、固定させるクサビをエゴともいう。エゴシがいつの日か転訛してエシになった。
 それと「シ」の解釈である。方言でいえば「おんし」「おとこし」「おなごし」の人の意の「し」。そうなれば「凹状地形に住む人」から江師となったのか。合理的な根拠は一つもないが、思い浮かべたままの備忘録である。
 

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(20170619胡)

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